RAGとは? 生成AIチャットボットの精度向上の仕組みについて解説
2024.10.21
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AIの発展に伴い、ベクトル検索やセマンティック検索などの高度な検索技術が注目されています。しかし、具体的な違いや特徴が理解できていない方もいるのではないでしょうか。ベクトル検索とセマンティック検索は、社内業務の効率化や問題解決に役立つ検索技術です。本記事では、ベクトル検索とセマンティック検索の違いやそれぞれのメリット、デメリットなどを解説します。
ベクトル検索やセマンティック検索は、従来のキーワード検索とは異なり、ユーザーの検索意図を理解できる検索技術として注目されています。
まずは、ベクトル検索やセマンティック検索の基礎知識や違いを詳しく見ていきましょう。
ベクトル検索とは、テキストや画像などのデータを数値のベクトルで表し、そのベクトル同士の距離を計算することで、関連性のある情報を見つける検索技術です。単語の意味や文脈を理解し、似たような意味を持つ情報を効率的に見つけ出せます。
例えば「犬」という単語をベクトル化すると、それに関連する「動物」「ペット」「哺乳類」といった言葉も「0.4, 0.2, 0.8, -0.7」といった数字(ベクトル)で表されます。これらの数字は単語の意味や関連性を表していて、検索時はこの数字同士の距離を計算する仕組みです。
つまり、検索したキーワードと関連性の高いキーワードが、ベクトル空間の中で近い場所にあるほど意味が似ていると判断され、検索結果に表示されやすくなります。
キーワードがあいまいだったり誤字があったりしても、意味が似ているものを探し出せるのがベクトル検索の特徴です。
セマンティック検索は、検索クエリの意味や意図に基づいて関連性の高い情報を探し出せる検索技術です。
セマンティックとは、コンピューターにデータの意味を理解させ、コンピューター自身が理解したデータを利用できるようにする技術のことです。IT業界で使用されている言葉で、日本語にすると「意味の」「語義の」を意味します。
セマンティック検索では、検索キーワードから検索意図をコンピューターが理解し、ニーズに合った検索結果を表示します。
例えば「家庭菜園でトマトを育てるには?」と検索した場合、「育てる」に類似した「栽培する」も検索表示に引っかかります。類似しているキーワードが多く引っかかる場合があるものの、もしそのサイトが「畑でトマトを育てる」といった内容なら、意味が類似していないために検索表示では下位となります。
またページ下部の関連する検索欄には、ユーザーが興味を持ちそうな関連キーワードが表示される点もセマンティック検索の特徴です。
ベクトル検索とセマンティック検索は、どちらも関連性の高いキーワードを効率的に探せる検索技術ですが、検索手法やアプローチが異なります。
すでに説明したように、ベクトル検索は文章や単語をベクトルに変換し、その数値を使って検索する方法です。検索キーワードと数値が近い別のキーワードを効率良く探し出せるのが特徴です。ベクトル検索は検索意図を理解するのではなく、データのベクトルの数値が近いものを見つけることに焦点を当てています。そのため、意味的な関連性がある情報を探す際に役立ちます。
一方でセマンティック検索は、検索キーワードからユーザーの検索意図や目的を理解して、その意図に合った結果を提供する検索技術です。例えば「犬の育て方」と検索したユーザーは、犬の育て方以外にも食事管理方法やしつけ方法を知りたい可能性があります。セマンティック検索では、こうした細かなニーズを理解し、関連する情報を幅広く探し出せます。
要するにベクトル検索は、文書そのものを数値化して関連した情報を探す検索技術なのに対し、セマンティック検索は「ユーザーが何を知りたいか」を理解して、すでにある検索結果の中から最適なものを選ぶ検索技術です。
ベクトル検索を使うとどのようなメリットがあり、逆にどのようなデメリットが存在するのかを見ていきましょう。
ベクトル検索のメリットは、以下の4つです。
ベクトル検索は、数学的な類似度の計算を用いるため、大量なデータでも高速処理が可能です。検索したキーワードの類義語や対義語を膨大なドキュメントから学習、分析しているため、検索クエリに合った検索結果が短時間で表示されます。
データベースに新しいカテゴリやトレンドを追加するには、過去のデータを手作業で分析し、正しいラベルを付ける必要がありますが、一つの作業に時間がかかります。しかし、ベクトル検索はデータの意味や関係性を数値として表現するため、従来の手法では捉え切れないような新しいカテゴリやトレンドを瞬時に認識できるのです。この原理は、マーケティングの分析などでも活用されています。
またベクトル検索は、検索キーワードが正しいキーワードと一致していなくても検索結果に該当のサイトや画像が表示される点もメリットです。通常の検索では、入力したキーワードが一致しないと結果が出ない場合がありますが、ベクトル検索では似たような言葉や関連する情報も見つけ出せます。
例えば、検索エンジンで「ジムに行く」と打ったつもりが、「事務に行く」と表記を間違えていた場合でも、ベクトル検索なら「ジム」に関連したサイトを表示できます。これは、学習させたデータの中に「ジム」と「事務」のような似た言葉の関連性が含まれているためです。
このようにベクトル検索は、特定のキーワードを思い出せない場合や誤字を含む場合でも、関連する情報を見つけやすい点が大きなメリットです。
さらに、ベクトル検索は文字だけでなく画像や動画、音声なども検索対象にできます。これはベクトル検索が画像や動画、音声から埋め込みデータを生成し、キーワード同士の類似度を計算しているためです。
例えば「癒やされるコンテンツ」と検索すれば、そのテーマと類似している動画や画像を見つけ出せます。
ベクトル検索は、製造業やEC業界の業務効率化にも役立ちます。製造業では技術文書だけでなく設計図の検索ができたり、EC業界では商品画像と説明文をセットで検索をかけられたりする点がメリットです。ベクトル検索を使えば、情報を効率良く入手できるようになり、社員が調査や分析にかける時間を削減できます。
ベクトル検索は、ペタバイトに及ぶほどの大量で大規模なデータの処理も可能です。
例えば、数百万件の画像や動画、テキストから必要な情報を瞬時に検索できるため、企業のビックデータから数値を分析したいときや、ビジネス戦略を数値的な面から策定したいときに役立ちます。
ただし検索処理が速いだけに、検索結果がニーズと合致しない可能性もあるため注意が必要です。
ベクトル検索には、以下のようなデメリットも存在します。
ベクトル検索を導入するには、正確な学習データの準備や構築、高性能なハードウェアを用意する必要があるため、運用開始までにコストと手間がかかります。
また精度の高い検索技術を埋め込むには、データの更新や見直しを定期的に行わなければなりません。導入コスト以外に運用コストもかかるため、どちらも視野に入れつつ予算とのバランスを考慮しながら導入を進めていく必要があります。
加えて学習データの内容にも力を入れなければなりません。例えば「スマートフォン」を「携帯電話」として検索結果に反映させるには、2つの言葉を同じ意味だと学習させる必要があります。一般的な言葉のバリエーションを学習データとして用意しておかないと、検索結果で求めている情報を得られない可能性があります。学習データの用意は簡単にできるわけではなく、手間がかかるため十分なリソースが必要です。
ベクトル検索の精度を保つには、学習データの定期的な見直しが必要です。
単に新しい学習データを段階的に追加するのではなく、検索速度を維持しながら全体のインデックスを再構築する必要があります。インデックスとは、検索対象となるデータの目次のようなもので、大量の情報を効率的に検索できるようにする仕組みです。
このインデックスが定期的に更新されないと、古いデータに基づいた検索結果が表示されてしまい、ユーザーのニーズに合わない可能性があります。
また更新作業ではデータを追加するだけでなく、全体のインデックスを最適化し直さなければなりません。
ただし、最近のベクトル検索のシステムは段階的な更新ができるようになり、全体の検索技術が低下する確率は低くなっていると言われています。
ベクトル検索を導入する際は、セキュリティー対策もセットで考える必要があります。
ベクトル検索では、テキストや画像などのデータをベクトル数値に変換して情報を扱うため、その数値から元のデータを特定するのは容易ではありません。しかし、技術の進歩に伴い、悪意のある人物がデータを復元する可能性があります。
元データに顧客の個人情報や会社の機密情報が埋め込まれている場合、情報漏えいにつながるリスクもあるため、セキュリティー面の対策が必要です。
また第三者によって検索キーワードからユーザーの検索意図を推測されるリスクも伴います。ユーザーのプライバシーを保護するための対策を講じるのも重要です。
ベクトル検索は、検索結果の説明が難しいとされています。
ベクトル検索が数値化されたデータ同士の類似性を計算する検索技術のため、なぜ特定の結果が表示されたのかを理解するのが困難なためです。
例えば、あなたが「楽しいゲーム」と検索したときに、あるゲームが結果に出てきたとして、そのゲームのどこが楽しいと評価されたのかが分からない場合があります。そのため、検索結果の背後にある理由や根拠が明確にならないと、重要な決断をする際に不安を感じる可能性があります。
金融や医療業界では、根拠に基づいた意思決定が重要です。検索結果の裏付けが不明瞭な場合は、情報の信頼度が下がる可能性があります。
セマンティック検索のメリットとデメリットも見ていきましょう。
セマンティック検索のメリットは、以下の通りです。
セマンティック検索を導入することで、検索技術の精度を高められます。これまでの検索技術では、単にキーワードが一致するかどうかに基づいて結果が表示されていました。しかしセマンティック検索では、検索キーワードの背後にあるユーザーの意図に合った検索結果の表示が可能です。
またキーワードと関連性のある情報も提供できるため、ユーザーが必要としている情報にたどり着きやすくなります。
セマンティック検索は、人間が話すような自然な言語から検索クエリを理解することが可能です。
検索エンジンで投げかけた質問に対して、単に文字列だけで検索をかけるのではなく、質問の文脈や意味を理解した上で検索結果に反映できます。例えば「旅行」の検索をした場合は「観光」や「ホテル」などの関連性のあるトピックの情報も反映される仕組みです。
Googleの検索エンジンは、強調スニペットやナレッジグラフ、アンサーボックスなどのセマンティック検索を活用した機能的な検索技術を導入しています。
セマンティック検索は、ベクトル検索と同じように検索キーワードに多少の誤字があっても検索結果に反映されるメリットがあります。
GoogleやYahoo!JAPANの検索エンジンでは、誤字があっても検索意図を理解し、関連する情報を表示してくれます。例えば「おすすめのスムージー」と打ったつもりが「おすすめのスムジー」になっていた場合でも「次の検索結果を表示しています: スムージー」と表示してくれる仕組みです。
セマンティック検索の導入によって、ユーザーは正確なスペルを思い出せない場合や入力ミスをしてしまったときでも、探している情報を取得しやすくなります。
セマンティック検索は、質問応答システムへの応用が可能です。
社内向け・顧客向けのチャットボットや問い合わせシステムと連携させれば、ユーザーからの質問に対して適切な回答を提供できるようになります。これまでにシステムへ寄せられた質問内容を学習データにまとめれば、より高度なセマンティック検索が可能です。
また自動応答が可能なチャットボットに埋め込むことによって、自然な言語でユーザーの意図に合った回答が営業時間外でも提供できるため、業務効率と顧客満足度を同時に向上できるでしょう。
セマンティック検索には、以下のようなデメリットがあります。
セマンティック検索を効果的に機能させるためには、学習データの質が重要です。
質の高いデータがなければ検索精度が低下し、ユーザーが期待する情報を提供しにくくなります。また誤情報や古い情報を更新しなければ、ユーザーに間違った返答をしてしまう可能性があります。信頼できるデータソースから学習データを構築することが重要です。
セマンティック検索の導入に伴い、セキュリティー対策を講じる必要があります。
ユーザーが入力した検索キーワードには、電話番号や機密情報など個人を特定できる情報が含まれている場合があります。情報漏えいのリスクを軽減するためにも、データの暗号化やアクセス制限などのセキュリティー対策を行い、ユーザーや企業のプライバシーを保護することが重要です。
セマンティック検索の性能を上げるには、学習データの段階的な追加と更新が重要です。しかし導入までに時間や人的リソース、金銭的なコストがかかるため、準備や学習にかけるリソースがない企業は、メリットを感じるまでに時間を要する可能性があります。
またハードウェアやコンピューターの専門知識も必要となるため、場合によっては外注を検討する必要があります。
ベクトル検索とセマンティック検索は注目を集めている技術ですが、他にも多種多様な検索技術が存在します。例えば、以下の検索技術が挙げられます。
ハイブリッド検索とは、複数の検索技術を組み合わせて使用する方法です。
例えば、ベクトル検索と従来のキーワード検索を組み合わせることで、両者の利点を活かした高精度な検索を実現できます。
ユーザーが「安いカメラ」と検索した場合、キーワード検索によって低価格のカメラが一覧表示されると同時に、ベクトル検索により「コストパフォーマンスが高い」や「人気モデル」などの関連情報も提示できる点がメリットです。
レキシカル検索とは、単語や文字列の表面的な一致を基本とした検索技術です。
セマンティック検索のように文章の文脈や意図をくみ取るのではなく、検索キーワードと一致している単語がヒットしたサイトのみを検索結果に表示します。つまり、キーワードそのものの一致に基づいた検索技術のため、関連する言葉や同義語には反応しません。
特定の単語をリサーチするのに適した検索技術ですが、意味や文脈を考慮しないため、ユーザーが求める情報を迅速に提供できない可能性があります。
ファセット検索とは、Webサイトが設定した条件からユーザーが選択すると検索結果が反映される技術です。
例えばECサイトでは、商品を色やサイズ、価格帯、カテゴリなどで絞り込むためのボタンやリストが用意されています。ユーザーはボタンやリストを自由に設定することで、希望する条件に合った商品のみを表示させることができます。キーワードを入力しなくても効率的に求めている情報にたどり着ける点が、ファセット検索のメリットです。
ただし条件の数が多すぎるとユーザーが困惑する可能性があり、顧客満足度が低下するリスクもあります。
ベクトル検索とセマンティック検索は、あらゆるツールで使用されています。
代表的な例はGoogleの検索エンジンです。Googleの検索エンジンに検索キーワードを入力すると、ユーザーの検索クエリを検索技術が理解し、ニーズに基づいた情報提供をしてくれます。
またベクトル検索とセマンティック検索は、アプリやECサイトにも導入可能です。ユーザーの閲覧履歴からおすすめの商品やコンテンツを自動的に提案してくれるため、顧客満足度アップにつながります。
他にも、研究を必要とする分野で社内文書やエビデンスを探すためのツールとして活用したり、AIやチャットボットと連携させたりと使い方はさまざまです。
当社のAIチャット「amie AIチャットボット」にも、高度な検索技術が使われています。ユーザーが質問内容の文字を間違えたり情報が少なかったりしても、システムが質問のニーズや意図を理解できるため、適切で正確な返答が可能です。
さらにamieは、社内の既存ドキュメントやWebサイトから関連する情報をピックアップし、ユーザーに複数の回答候補をサムネイル表示で提供できます。
単に回答を出すのが目的でなく、悩みが解決できたかに焦点を当てているため、ユーザーの問題解決に役立つチャットボットとして機能します。ご興味のある方は、ぜひ一度ご相談ください。
ベクトル検索とセマンティック検索は、情報提供の精度と効率を高められる検索技術です。具体的な違いは、ベクトル検索が数値化したデータの類似性を計算する技術に対して、セマンティック検索は検索意図を理解した検索結果を表示する技術であることです。
これらの技術を社内のチャットボットや検索機能として実用することで、業務の生産性を高め社員の負担を軽減します。とはいえ、導入には手間とコストがかかるため、十分なリソースを確保しなければなりません。
amieは、シナリオやFAQの事前作成が不要なAIチャットボットです。迅速に学習が完了し、迅速に稼働させることができます。また、学習データから回答を予測し、既存のドキュメントやURLに基づいた正確な内容をそのままユーザーに提供できます。
「正確な情報を迅速に届けられるチャットボットを導入したい」「社内の問い合わせ業務を効率化したい」とお考えの方は、ぜひamieの導入をご検討ください。