チャットボットで社内ヘルプデスクを自動化するには?
2024.9.26
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ナレッジが埋もれて活用されない状況では、業務効率の低下を引き起こす可能性があります。このような状況を打破する手段として注目されているのが、AIを活用したナレッジマネジメントです。AIは社内の情報資産を自動で分析し、必要な知識のノウハウを即座に共有できるメリットを持っています。
本記事では、AIによるナレッジマネジメントの仕組みや導入のメリット、課題を解説します。ナレッジ共有を効率よく行いたい企業担当者の方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
目次
ナレッジマネジメントとは、従業員が持っている知識やノウハウを共有することで、さらなる企業価値向上を目指す経営手法です。
テレワークの普及やDXの進展により、ナレッジマネジメントの重要性が一段と高まっています。これまで対面で行われていた情報共有の多くが、現在ではオンラインへと移行し、働く環境やコミュニケーションのあり方も大きく変化しました。
組織全体で個々の知識を活用する仕組みの構築が、分散した働き方の中で欠かせない要素となっています。まずは、ナレッジマネジメントの基本的な考え方や種類、暗黙知と形式知の違いを理解しましょう。
ナレッジマネジメントとは、これまでの業務経験で得た知識を組織で共有・活用し、業務効率化や属人化の解消を図る取り組みです。
個人が持っている情報を見える化することで、企業の情報資産の質が向上します。新人からベテランまでが共通した知識を持てば、組織の生産性も上がって売上や利益の確保も期待できます。
ナレッジマネジメントの概念は、1995年に日本の経営学者・野中郁次郎氏が出版した学術書をきっかけに注目されるようになりました。知識を企業の競争力と捉える考え方が世界的に広まり、効果的な経営手法として体系化していったのです。
ナレッジマネジメントの種類は、大きく分けて以下の4つです。
以下は、各手法の特徴をまとめたものです。
手法 | 特徴 | 具体例 |
---|---|---|
ベストプラクティス共有型 | これまでの成功事例から業務改善につながる共通点を分析する | 高い成績を収める社員の日報や提案資料、営業テクニックなどを社内で共有する |
知的資本型 | 組織に存在する知的資産(技術・特許・ブランドなど)を可視化し、売上向上を目指す | 専用ツールを使用して組織が持つ情報資産を分析し、収益アップを目指す |
専門知ネット型 | 各部門や職種に分散している専門的な知見を組織全体で共有し、業務全体の質を高める | 部署が持つ専門性を生かし、よくある質問に集約する |
顧客知共有型 | 顧客とのやり取りで得た情報を社内で共有する | 顧客アンケートの意見を新商品の開発やサービスの質向上に生かす |
どの手法を選択するかは、自社の規模や従業員数、市場でのポジションなどによって異なります。どのようなスキルや業務領域を強化したいのかを見極めた上で、適切な手法を選択しましょう。
ナレッジマネジメントの目的は、組織の成長に必要な知識を共有し、企業価値を高めることです。
人材不足が進む現代では、従業員一人ひとりの生産性を高めることが求められています。知識が継承されないまま人材が入れ替わると、これまで蓄積されてきた情報資産の質が低下し、市場での競争力が減少する可能性があります。
このような状況を防ぐためには、属人化した知識を組織全体で共有し、誰もが同じ水準で業務を遂行できる環境づくりが欠かせません。ナレッジマネジメントを強化することで、常に高いパフォーマンスを発揮できます。結果として、企業の競争力が上がるでしょう。
ナレッジマネジメントを強化する上で知っておきたい概念が、暗黙知と形式知です。それぞれの違いを理解することで、知識を効率よく共有できるようになります。
暗黙知を形式知に変換すると、業務効率がさらに向上するといったメリットもあるため、以下で具体的な特徴を見ていきましょう。
暗黙知とは、個人の直感や勘に基づいた知識のことです。共有すべき内容は頭で認識していても、その感覚は本人にしか分からないため、いざ伝承しようとしてもうまく言語化できない特徴があります。長年の経験や習慣の中で自然と身に付けた技術や判断力はマニュアルや図にするのが難しく、属人化が起こりやすい傾向です。
例えば、製造業では熟練した職人の技量に依存する場面が多く見られます。機械のわずかな音の違いから異常を察知する判断力や、微妙な手加減で部品を組み立てる精度の高い作業などは、長年の経験を通じて身に付く暗黙知の一例です。
暗黙知を共有せずに放置すると、特定の人にしかできない業務が増え、属人化が進んでしまいます。このような高度な技術が後世に伝わらなければ、企業の成長が止まる可能性もあります。
長期的な競争力を維持するためにも、暗黙知を形式知に変換し、組織全体で活用できる状態にしておくことが重要です。
形式知とは、マニュアルや図などで共有しやすい知識のことです。業務フローや操作手順、ルールなど、誰が見ても理解できる形で記録されています。ナレッジマネジメントでは、説明しにくい暗黙知を形式知へと変換し、組織全体で活用できる状態にすることを重要視しています。
形式知は、企業の競争力を高めます。例えば、製造業で高いパフォーマンスを発揮する従業員の作業をマニュアル化すれば、適切な業務フローが明確になり、納品物の品質のばらつきを防止できます。品質が改善されることで企業の信頼度が高まり、売上アップにもつながるでしょう。
暗黙知は共有や再現が難しく、業務の属人化を招く要因になります。そこで効果的なのが、暗黙知を形式知へと変換するフレームワーク「SECI(セキ)モデル」です。
SECIモデルでは、知識がどのように生まれて広がり、再び新しい知識として取り込まれるのかを示しています。主に、以下の4つのプロセスで構成されています。
プロセス | 内容 | 具体的なステップの例 |
---|---|---|
共同化(Socialization) | これまでの成功事例から業務改善につながる共通点を分析する | OJTでベテランからこつや業務の進め方を教えてもらう |
表出化(Externalization) | 暗黙知を形式知に変換する | 教えてもらった内容をフォーマットに分かりやすくまとめる |
連結化(Combination) | 表出化で変換した複数の形式知を統合し、新たな知識として構築する | 既存のマニュアルや資料と統合させ、社内ナレッジベースに集約する |
内面化(Internalization) | 認識した形式知を実践し、再び暗黙知として取り込む | 研修やOJTを通じて学んだ手順を、実務で繰り返し実践する |
このサイクルを繰り返すことで、個人の経験や感覚にとどまっていた暗黙知が組織全体で活用できる形式知へと変わり、企業価値につながるナレッジが蓄積されます。暗黙知・形式知を相互に変換しながら循環させることで、組織の知識はより実用的なものへと進化していきます。
個人が持っている知識を共有すれば業務効率化が期待できますが、暗黙知は言語化しにくく伝承が難しい傾向があります。そのような課題を解決へと導くのが、AIを用いたナレッジマネジメントです。
AIは、言語化の補助だけではなく、情報の収集・整理・分析といった一連のプロセスを自動化し、知識の共有と活用を加速させる力を持っています。
以下では、AIがナレッジマネジメントにおいて果たす主な役割やその仕組みを紹介します。
AIは、ナレッジマネジメントにおけるデータ収集と整理の工程を効率化します。
ナレッジをファイルごとで管理している場合、情報量が多ければ多いほど、探しているファイルがどこにあるのかをすぐに判断できません。業務マニュアルや商品情報を参照したいときは手作業で探さなければならず、求めている情報にたどり着くまでに時間がかかる可能性があります。
AIは大量のフォルダの中から必要な情報を抽出してくれるため、手作業で特定のファイルを探す手間を省けます。文書の他、画像や音声の自動抽出も可能です。
さらに、あらかじめ関連性の高いドキュメントをカテゴリごとに分けておけば、ナレッジの検索のスピードが向上します。
AIが持っている自然言語能力(NLP)は、伝承しにくい情報を扱う場面で重要な役割を果たします。
自然言語能力(NLP)とは「Natural Language Processing」を訳したもので、人間が普段話している言語でテキストや文書を生成する技術のことです。テキストから文脈や意味を分析・理解し、ユーザーの求めている回答を生成します。
熟練者の技能や経験値に頼る作業は、個人の感覚で進めているケースが多いため、文章化しても表現が曖昧になりがちです。このような情報はマニュアル化しても理解されにくく、次第に使われなくなっていく可能性があります。
自然言語能力を持つAIは、ドキュメントから必要な情報を分かりやすい表現で変換・要約してくれるため、個人の技量に依存する業務の標準化が効率よく進みます。
言語化しにくい知識が有益なナレッジとして扱えるようになれば、企業価値の向上が期待できるでしょう。
AIの機械学習により、ナレッジベースは常に適切な状態へ進化します。機械学習とは、ユーザーの過去の行動や質問内容から学習し、そのパターンに基づいて自律的に改善を繰り返す仕組みです。
たとえば、過去の成功事例をAIに学習させることで、AIは効果的な対応に共通する要素や傾向を抽出します。これにより、類似の質問があった際には、過去の成功事例に基づいた、より的確な情報提供が期待できます。
一般的に、ナレッジベースの情報量が増加すると、必要な情報を見つけ出すまでの時間が長くなりがちです。しかし、機械学習能力を持つAIは、データ量が増えるほど学習を深め、判断の精度を高めます。その結果、社内のナレッジベースはアップデートされ、実務で活用しやすい状態を維持できるのです。
ナレッジマネジメントにAIを導入すると、以下のようなメリットを得られます。
AIを活用すれば、組織内の情報共有を効率よく行えるようになります。従業員が持つ知識やノウハウは、日々の業務の中で自然と蓄積されていきますが、その多くは言語化されずに個人の中にとどまりがちです。
AIは、社員の発言や行動パターン、作成した資料などを自動で分析し、形式知として整理できます。理解されにくい暗黙知も可視化できるようになるため、従業員一人ひとりの知識も豊富になり、企業全体の連携力やパフォーマンスが向上します。
AIナレッジマネジメントの導入で、業務の属人化の解消も期待できます。
特定の人材しか担当できない業務が多いと、その人材が不在のときに業務が滞るリスクが高まります。異動や退職時の引き継ぎが十分ではない場合、業務を担当できる人材が誰もいないといった状況になりかねません。
AIで蓄積したナレッジを一元管理すれば、個人に依存していたノウハウを組織全体で活用できます。新人教育の効率化にもつながり、長きにわたって優れた技術が伝承されるでしょう。
AIを活用したナレッジマネジメントにより、意思決定のスピードが向上します。これは、必要な情報を探すのに時間をかけずに、信頼性の高いデータにすぐアクセスできるためです。
ただナレッジを蓄積しているだけの場合、該当資料を探すのに時間がかかります。適切に整理されていなければ、判断材料を集めるために他部署に確認を取る手間も発生するでしょう。
AIは判断に必要な情報を整理して提示できるため、資料探しにかかる時間を削減できます。迅速な判断が求められる場でも、根拠のある情報を基に迷わず意思決定を行えるようになります。
AIを活用すれば、業務の中で生まれる知識や対応履歴が自動的に蓄積され、有益なナレッジとして活用できるようになります。
AIを活用しない場合、業務フローが変更になった際に全て手作業でマニュアルを変更しなければなりません。相当な手間がかかる上、反映漏れが起こって古い情報が残ったままになる可能性があります。
AIは更新すべき箇所を自動で検知したり、必要に応じて古い情報を消去したりすることが可能です。ナレッジベースの鮮度が維持されることで、業務に必要な情報を常に最新の状態で参照できます。
情報の更新が継続的に行われる仕組みが整えば、ナレッジは一時的な情報にとどまらず、組織の資産として活用され続けるでしょう。
AIナレッジマネジメントは、幅広い業界の企業で導入されている経営手法です。活用事例を知ることで、ナレッジマネジメントとAIの関係性が明確に見えてきます。
ここでは、以下の3つに分けてAIナレッジマネジメントの活用事例を紹介します。具体的なイメージが付いていない方は、ぜひ参考にしてみてください。
ある企業では、社内からの問い合わせ対応に多くの工数がかかっており、担当者の業務負担が大きい点が課題でした。特に総務・人事・情報システム部門では、定型的な質問が何度も繰り返されており、本来やるべき業務に集中できていない問題が発生していたそうです。
そこで、この企業ではAIチャットボットを導入し、よくある質問や社内ルールに関する情報をナレッジベース化しました。AIが既存ドキュメントを参照して回答する環境が構築されたことで、社内の問い合わせ数は運用から1カ月で約20%減少しました。
担当者の負担軽減だけではなく、組織全体の業務効率化や生産性向上にもつながっています。
ある飲料メーカーでは、社内に点在する業務マニュアルや技術資料の活用効率を高めるため、生成AIを活用した情報検索システムを導入しました。
導入したシステムはPDFやPowerPoint、Wordといった複数形式の資料に対応しており、ファイル名だけではなく、文書内の文章や画像データも含めて横断的に検索できる仕組みを構築できました。検索結果にはファイルの概要やサムネイルに加えて、AIによる要約も自動で表示されるため、検索目的と資料内容が一致しているかを即座に判断することが可能です。
技術文書やノウハウをAIで集約・整理し、長期的な商品開発の強化や業務効率を目指しています。
ある大手保険会社では、対話型AI「ChatGPT」を活用し、事故対応サービスの品質向上に取り組んでいます。
この取り組みでは、保険約款や社内マニュアル、FAQなどの情報をAIに学習させ、社員や保険代理店からの照会対応業務を効率化する実証実験を開始しました。
事故対応業務では、AIが質問の意図に合った回答をタイムリーに生成することで、お客さまへの対応スピードの向上を目指しています。経験を積んだ社員のノウハウもAIの回答に取り入れながら、提案力の向上に取り組んでいます。
AIナレッジマネジメントは業務効率化に役立つ考え方ですが、その一方で以下のような課題を抱える企業もあります。
参照元となる学習データの精度が低い
導入効果を十分に感じられない
AIナレッジ活用の意識が社内に浸透しない
導入時に直面する課題の一つが、参照元となる学習データの精度が低くなる可能性がある点です。
AIは、学習した内容を元に回答や提案を行います。そのため、学習データに古い情報や間違った情報が含まれていると、事実とは異なる回答を出力する可能性があります。
例えば、既に廃止されたルールや過去の業務フローが含まれていると、それに基づいた回答が生成され、現場の混乱を招きかねません。特に医療や金融などの根拠が重要となる分野で誤情報を提供すると、取り返しの付かないことになる可能性があるため注意が必要です。
AIを活用したナレッジマネジメントを成功させるには、定期的に学習データを見直し、情報の鮮度を最新に保ちましょう。
AIナレッジマネジメントを導入しても、想定していた導入効果を感じられない場合があります。その場合は、明確な評価指標が設けられていないことが原因かもしれません。
導入する際は、最初にROI(投資対効果)を設定しましょう。ROIとは、システムの導入コストに対して、どれだけの成果や利益が得られるかを示した数値です。
例えば「問い合わせ対応時間を20%削減する」「ナレッジベースの利用率を50%向上させる」など、具体的な数値目標を立てておくと良いでしょう。設定した目標を基準にし、導入効果を定期的に測定するのがおすすめです。
なおAIは一度導入したら終わりではなく、定期的に参照元を見直して学習させる必要があります。導入効果を感じられない場合は、前の項目で解説したデータの精度による問題かもしれないため、一度確認してみてください。
AIナレッジ活用の価値が社内に浸透していないのも、直面しがちな課題の一つです。
新しいツールや仕組みに対して抵抗感を持つ人も少なくなく、定着には時間がかかるケースも見られます。導入目的が理解できておらず、ナレッジ共有の文化が根付かないのもよくある失敗例です。
このような課題を解決するには、従業員一人ひとりのITリテラシーを向上させる必要があります。研修や情報共有の場を設け、ナレッジマネジメントがどのようにして企業成長につながるのか、なぜ実施するのかなどを説明しましょう。
AIを活用したナレッジマネジメントの定着に向けて、従業員が自発的に知識を記録・共有できる仕組みを作るのも効果的です。誰もが簡単にナレッジを入力できる工夫や、情報提供の数に応じた評価精度を設けるのも良いでしょう。
ナレッジマネジメントにAIを活用して必要な情報を収集・整理すれば、検索効率の向上や意思決定の迅速化が実現します。
その一方で、導入時は学習データの精度低下や効果測定の難しさ、社内での活用意識の低さなどの課題に直面する可能性があります。評価基準の設定や定期的な見直しに加え、研修などを通じて導入目的やAIナレッジマネジメントの意義を説明しましょう。
AIナレッジマネジメントの導入をお考えの方は、ぜひ「amie AIチャットボット」の導入をご検討ください。「amie AIチャットボット」は、質問内容が曖昧でも関連情報を正確に抽出して回答できます。学習データに基づいて直接回答を生成するため、信頼性のあるナレッジ提供が可能です。
ナレッジマネジメントの仕組み作りに課題を感じている方、AIの導入に不安をお持ちの方も、ぜひお気軽にご相談ください。