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エキスパートシステムとは? 仕組みから構築の基本、課題まで解説

エキスパートシステムとは? 仕組みから構築の基本、課題まで解説

エキスパートシステムとは、専門家の持つ知識をデータベース化し、意思決定や判断の支援を行うシステムです。エキスパートシステムは、どのような分野で活用されているのでしょうか。

本記事ではエキスパートシステムの概要や仕組み、主な用途、導入のメリット、課題を解説します。専門知識の継承方法や業務の効率化に課題を抱えている方は、ぜひ参考にしてみてください。

エキスパートシステムとは?

エキスパートシステムとは、特定分野の専門家の知識を組み込むことで、推論を行えるコンピューターシステムで、AI(人工知能)の一種です。

その分野に関する問題に対して、専門家と同等の知識を持つため、エキスパートシステムを活用すれば、素人であっても、専門家に匹敵するような問題解決力を得ることが可能です。

人は問題や疑問が発生した際、これまでに蓄積した知識や経験を基に、解決方法を推論します。エキスパートシステムは、主に「知識ベース」と「推論エンジン」で構成されており、人が問題解決を行う際と同じように働きます。意思決定の代替や補助を目的として活用されているシステムです。

エキスパートシステムの歴史

最初のエキスパートシステムは1965年に開発されました。その後、1970年代には細菌感染診断と治療方針策定支援に特化したシステムが誕生し、専門医の正答率には及ばないものの、非専門医よりは高い正答率を実現しています。しかし、課題が多く、医療現場での活用は実現しませんでした。

1980年に入ると、技術革新に伴い、エキスパートシステムが実用化されるようになります。しかし、専門家でも言語化が難しい「暗黙知」の課題が生まれ、次第にエキスパートシステムの研究は下火になっていきました。

一時は研究が滞ってしまったエキスパートシステムですが、2010年頃から再び注目が集まるようになります。それに加え、近年の飛躍的なAI技術の進化により、エキスパートシステムへの注目度はさらに高まってきました。

ちなみに、エキスパートシステムとは呼ばれていないものの、過去の閲覧履歴からECサイトでおすすめ商品を表示する機能や、ニュースサイトで関連性の高いニュースを表示する機能は、エキスパートシステムの発展形です。このように、身近なシーンでも、エキスパートシステムの活用が始まっています。

エキスパートシステムの仕組み

前述した通り、エキスパートシステムを主に構成するのは、「知識ベース」と「推論エンジン」です。

知識ベースとは、コンピューターが処理できるように加工した専門家の事実・知識・経験・ルールなどに関するデータを、格納したデータベースです。知識ベースには、膨大な情報が「AならばB」といった形式で格納されています。エキスパートシステムが導き出す回答や解決策の質は、知識ベースに格納されているデータの質と量に大きく影響されます。

推論エンジンとは、ユーザーが入力した情報に対して、知識ベースに格納されたデータを用いて、質問に対する回答や解決策を推論するための機構です。

先ほど解説した通り、人間は問題や疑問が発生すると、蓄積した知識にアクセスし、それを基に回答や解決策を導き出します。知識ベースと推論エンジンを持つエキスパートシステムは、人間が回答や解決策を導き出すのと同じプロセスで、回答や解決策を導き出すことが可能です。

エキスパートシステムの構造の特徴は、知識ベースと推論エンジンが分かれていることです。この二つが分かれていることにより、知識が増えたり内容が修正されたりしても、知識ベースだけアップデートすれば、問題なくシステムを利用できます。

エキスパートシステムを構成する要素は、知識ベースと推論エンジン以外にも、「ユーザーインターフェース」と「説明機構」があります。

ユーザーインターフェースとは、ユーザーがシステムとコミュニケーションを取る際に、接点となる機構です。ユーザーインターフェースによって、ユーザーは質問を入力したり、結果を受け取ったりできます。

「説明機構」とは、システムが導き出した回答や解決策に対する根拠を説明するための機構です。いくら専門家の知識が組み込まれたコンピューターシステムだからといって、根拠なしにその答えや解決策を信用することはできません。エキスパートシステムは説明機構を持つことにより、導き出した回答や解決策の信頼性を高めます。

エキスパートシステムの主な用途

エキスパートシステムは、具体的にどのような用途があるのでしょうか。代表的な用途を解説します。

医療機関での診断支援

エキスパートシステムは、医療機関での診断支援に活用できます。

知識ベースに過去の症例データを蓄積させ、患者さんの症状や状態、検査結果などの情報を入力すると、疑いのある疾患の推測が可能です。医師の診断がサポートできるため、診断精度の向上も期待できる他、医師の負担軽減にも役立つでしょう。

また診断に沿って推奨される治療方針を提示してくれるため、診断後の治療にも活用できます。より効果が見込まれる治療を行えるようになるため、患者さんの負担も軽減できるのがメリットです。

近年はオンライン診療が普及し、へき地や遠隔地に住む人も手軽に医療を受けられるようになりました。エキスパートシステムの活用により、離れた場所に住む患者さんにも専門医に劣らない質の高い医療が提供できるようになるでしょう。

医療分野で活用されているエキスパートシステムには、薬剤や処方に関する情報を知識ベースに蓄積させた「処方支援システム」があります。処方支援システムを活用すれば、患者さんの症状などのデータや服用している他の薬剤との相互作用などを基に、適切な薬剤とその用量を提案してくれます。

製造業での設計支援・不良品の原因特定

製造業では、設計支援や不良品の原因特定にエキスパートシステムが使われています。

製品の設計に問題があると、いくら正しい工程で製造しても、不良品が作られてしまいます。そのため製品設計は、製品の品質を担保するのに重要な工程です。

そこで、設計者の知識や経験をデータベース化した「設計支援システム」の活用が進んでいます。設計支援システムによって提示される適切な設計案に基づき、設計を行うことで、効率よく品質の高い製品を作ることが可能です。

また製造された製品の異常を見つけ出すために、「不良品診断システム」も活用されています。ベテラン作業員の知識やノウハウを知識ベースに蓄積すると、不良品が発生した原因を迅速に特定できます。早い段階で原因が分かれば、対応策を講じられるため、問題の早期解決につながるでしょう。

金融業での与信審査・資産運用

金融業では、与信審査や資産運用にエキスパートシステムが活用されています。

与信審査とは、信用して取引ができる相手かを見極めるために行われる審査です。与信審査の専門家が持つ知識やノウハウを知識ベースに蓄積した「与信審査システム」を活用すれば、すばやく取引相手の信用度や返済能力を判断し、融資の可否や条件を提示してくれます。与信審査の精度を高めるとともに、審査にかかる時間の短縮も可能です。

また資産運用にもエキスパートシステムは有効です。ファンドマネジャーなどの専門家の知識や経験のデータベース化により、投資目的に応じた投資先や、リスクの考え方に応じた戦略を提案できます。

法務でのルール適用の判断補助

法務でのルール適用の判断補助にも、エキスパートシステムが活躍します。

法務では、倫理的な配慮や公正さが必要とされるケースが多いです。法律や法曹関係者の知識を知識ベースとして蓄積したシステムを用いることで、法的な判断が求められる場面で、根拠を基にした判断がしやすくなるでしょう。

エキスパートシステム構築の基本ステップ

エキスパートシステムを構築する際の基本的な流れについて解説します。

専門知識の収集

エキスパートシステムを構築するには、まず専門知識の収集が必要です。

専門家へのインタビューや過去のデータ・文献の参照などによって、知識ベースに蓄積させるデータを集めます。先ほど解説した通り、エキスパートシステムの質は、知識ベースに格納されているデータの質や量に左右されるため、十分なデータを確保することが重要です。

知識表現形式の設計

次に知識表現形式の設計を行います。知識表現とは、コンピューターが認識できるように情報を記述する方法です。

知識表現形式には、以下のようなものがあります。

  • ルールベース:「AならばB」という形式
  • ファジーロジック:「やや」「だいたい」など、曖昧な判断も扱える形式

このような特定の形式に加工することで、コンピューターがデータを処理できます。

推論方式の選定

次に推論方式を選定します。推論方式は、データを基にして、推論エンジンがどのような流れで判断を行うかを定めるものです。

推論方式として代表的なのは「前向き推論」と「後ろ向き推論」です。

前向き推論の場合、与えられた事実を基に、結論を導き出します。例えば、患者さんの症状や状態から、それに該当もしくは類似する疾患を推測するのが、前向き推論です。

一方、後ろ向き推論の場合、結論を立てた上で、それが成り立つための条件を確かめます。例えば、トラブルが起きた原因を◯◯と結論づけた上で、それが成り立つ条件に当てはまっているかを確認し、条件が全て一致した際に原因を確定する仕組みです。

エキスパートシステムにどのような支援を受けたいのかによって、適した推論方式は異なります。

検証とチューニング

最後に検証とチューニングを実行します。

検証とは、エキスパートシステムが設計通りに動くかどうかを確かめることです。テストデータを用いた精度確認を行い、必要に応じて、調整を行います。

運用開始後も定期的に検証とチューニングを行うことで、エキスパートシステムの精度を高められます。

エキスパートシステムの導入メリット

エキスパートシステムを導入すると、どのようなメリットが得られるのでしょうか。4つのメリットを解説します。

属人化の解消が目指せる

エキスパートシステムを導入するメリットは、属人化の解消が目指せることです。

専門家が持つ経験やノウハウのデータベース化によって、システムを活用する誰もが経験やノウハウを活用できるようになります。特定の専門家しかできなかった判断を標準化できるため、属人化の解消につながるでしょう。また大切な知識財産が失われるのを防げます。

加えて、専門家が不在のときでも、同等の判断が下せるようになることは、エキスパートシステムの大きなメリットといえるでしょう。

人手不足の解消につながる

人手不足の解消につながることも、エキスパートシステム導入のメリットです。

少子高齢化による労働人口の減少で、人手不足に悩む企業は多いです。特に知識や経験が豊富な専門家を確保することは、簡単ではありません。

専門家の知識や経験を組み込み、同等の推論が行えるエキスパートシステムを導入すれば、専門家が確保できなくても、円滑に業務が行えるようになります。短時間で回答や解決策を導き出してくれるため、迅速な対応が必要な場面でも、適切な対応を取りやすくなるはずです。

一貫性のある意思決定や判断ができる

一貫性のある意思決定や判断ができることも、エキスパートシステムを導入するメリットです。

人が意思決定や判断を行う場合、たとえ専門家だったとしても個人差が生まれます。しかし、エキスパートシステムなら、蓄積したデータベースを基に推論するため、判断にばらつきが生じることがありません。

同じ条件であれば、常に一貫した対応が取れるようになります。

意思決定のスピードを上げられる

意思決定のスピードを上げられることも、エキスパートシステムのメリットです。

人間が知識や経験から推論を立て、回答や解決策を導き出すには、それ相応の時間がかかります。複雑な内容の問題であれば、専門家の知識をもってしても、膨大な時間を要するでしょう。

しかしエキスパートシステムなら、迅速にデータを分析し、適切な回答や解決策を導き出せるため、すばやい意思決定が可能となります。

エキスパートシステム導入時の課題と注意点

エキスパートシステムを導入する際によくある課題や注意点を解説します。

知識の収集が難しい

知識の収集が難しいことは、エキスパートシステム導入時の代表的な課題の一つです。

前述した通り、エキスパートシステムの質は知識ベースの質と量に影響されますが、質が高い知識を膨大に集めようとすると、時間も手間もコストもかかります。

加えて、「暗黙知」の存在も、知識の収集をより難しくする要因です。暗黙知とは経験を通して専門家が身に付け、感覚的に獲得した知識で、その反対にテキストなどで学べる知識である「形式知」があります。既に触れたように、暗黙知は専門家であっても言語化が難しいのが特徴です。

暗黙知をどのように言語化し、データとして落とし込むかは、エキスパートシステム導入時の大きな課題といえるでしょう。

更新・保守の負担が大きい

更新・保守の負担が大きいことも、エキスパートシステムの課題です。

エキスパートシステムを効果的に運用していくには、更新や保守が欠かせません。更新にかかるコストも保守にかかるコストも大きいため、運用し続けるには、大きな経済負担が発生します。

情報は常にアップデートされていくため、導入後も継続的に知識の収集や更新を行わなければなりません。前述した通り、知識の収集は容易ではないため、作業負担も増大しやすいです。

想定外の状況に対応できないことがある

エキスパートシステムを導入する際は、想定外の状況に対応できないケースがあることを理解しておきましょう。

専門家と同等の推論が行えるエキスパートシステムですが、万能なシステムではありません。推論は事前に蓄積したデータに基づいて行われるため、データベースに関連する情報がなければ、回答や解決策を導き出せないでしょう。

想定外の状況が起こることを想定し、エキスパートシステムだけに頼るのではなく、専門家との関係性を構築しておくことも大切です。

意思決定の根拠と責任の所在を明確化する必要がある

エキスパートシステムを導入する際は、意思決定の根拠を明確に示す仕組みと、責任の所在を定めるルールが必要です。

エキスパートシステムには説明機構がありますが、場合によっては、納得に値する判断根拠が提示できない恐れもあります。説明責任が十分に果たせなければ、エキスパートシステムが提示した回答や解決策を信頼できません。導入の際は、システムがどのようにして意思決定しているのかに、透明性を持たせる必要があるでしょう。

またエキスパートシステムの回答や解決策が間違っていた場合、誰が責任を負うのかも重要なポイントです。導入の際は、ガイドラインを策定し、責任の所在を明確にしておきましょう。

まとめ:情報の有効活用や業務効率化には「amie AIチャットボット」もおすすめ

AI技術の先駆けともいえるエキスパートシステムは、専門知識の継承や人手不足の解消、業務効率化などを実現するシステムです。ただし導入・運用には多額のコストと手間がかかります。導入する際は、目的を明確にし、自社に適したシステムかどうかを検討しましょう。

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