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説明可能AI(XAI)が注目される理由は? 導入により回避できる企業リスクを解説

説明可能AI(XAI)が注目される理由は? 導入により回避できる企業リスクを解説

AI技術はビジネスのあらゆる場面で活用が広がり、業務効率の向上や新たな価値創出に貢献しています。しかしその一方で、AIの判断プロセスが人間には理解できない「ブラックボックス」と化し、予期せぬ不利益や差別的な判断につながるリスクも顕在化してきました。こうした課題への対応策として、今「説明可能AI(XAI)」への関心が高まっています。

本記事では、XAIとは何か、なぜビジネスに求められるのか、そして導入によってどのような企業リスクを回避できるのかを、仕組みや事例を交えながら詳しく解説します。

説明可能AI(XAI)とは?

説明可能AI(XAI:Explainable AI)とは、AIが下した判断や予測の結果だけではなく、なぜその結論に至ったのかという「理由」や「根拠」を、人間が理解できる形で説明・提示できるAI技術です。その目的は、AIシステムの透明性を確保し、その挙動に対する信頼性を高めることにあります。また判断根拠が明らかになることで、AIの公平性を担保したり、システムのデバッグや改善を容易にしたりできます。

従来の「ブラックボックス型AI」との大きな違い

ディープラーニングに代表される複雑なAIモデルは、高い予測精度を誇る一方で、その内部構造が複雑過ぎるため、なぜそのような判断を下したのかというプロセスが不透明になりやすいという性質を持っています。これが「ブラックボックス型AI」と呼ばれるものです。XAIは、このブラックボックスに光を当て、判断に至るまでの過程を可視化しようと試みるアプローチです。つまり、AIが出した「結果」の正しさだけではなく、その「プロセス」の妥当性や透明性を重視する点に、従来モデルとの大きな違いがあります。

なぜAIに「説明能力」が求められるのか?

AIの判断が、採用や融資、医療といった人々の生活やビジネスに影響を与える場面で使われるようになるにつれ、企業にはその判断の根拠を示す社会的責任が求められるようになりました。判断のプロセスが透明化されることは、ユーザーや社会がAIシステムを信頼し、受け入れるための土台となります。また説明能力は、万が一AIが予期せぬエラーやデータに基づく偏見(バイアス)を持っていた場合、その原因を発見し、修正するためにも役立ちます。

説明可能AIが注目される背景

AIに「説明能力」が求められるようになった背景には、AI技術の進化と社会への浸透が密接に関わっています。なぜ今、XAIへの注目が高まっているのでしょうか。ここでは、その背景にある社会やビジネス、そして法規制の変化という3つの側面から、XAIの必要性を解説します。

背景1:AIの社会実装加速と「ブラックボックス」問題の深刻化

AIの活用範囲は、金融や医療、採用、自動運転といった、人々の生活や安全に深く関わるクリティカルな領域へと急速に拡大しています。それに伴い、AIの判断一つが深刻な社会的・経済的損失や、時には人権侵害につながるリスクも高まっています。判断の根拠が不透明な「ブラックボックス」のままでは、ユーザーの不信感を生み、AIの社会実装そのものへの抵抗感にもつながりかねません。そのため、AIの判断プロセスを可視化する必要性が増しているのです。

背景2:企業の「説明責任(アカウンタビリティ)」への要求の高まり

AIの社会的な影響力が増すにつれ、AIを利用する企業には、そのシステムが下した判断について説明する責任、すなわち「アカウンタビリティ」を求める声が強まっています。顧客や規制当局、ひいては社会全体から、AI活用の透明性を確保するよう圧力がかかっているのです。特に、GDPR(EU一般データ保護規則)などで見られる、個人がアルゴリズムによる判断に対して「一定の情報開示義務や手続保障を通じた権利」の概念は、この潮流を象徴しています。

背景3:AI倫理・法規制の国際的な潮流とコンプライアンス対応

世界各国で、AIの信頼性と安全性を確保するための法整備が進んでいます。例えば、EUのAI法案は、AIシステムのリスクに応じて厳しい規制を課すものであり、透明性や説明責任を事業者に求めています。こうした国際的なガイドラインや規制に対応し、法的なリスクを回避しながら持続可能なAI活用を行うために、XAIは企業にとって有用なアプローチとなっています。コンプライアンスの観点からも、XAIの導入が検討されるようになっているのです。

説明可能AIにより可能となるリスク回避

では、XAIを導入することで、企業は具体的にどのようなリスクを回避できるのでしょうか。AIの判断プロセスを透明化することは、単に技術的な興味にとどまらず、企業の健全な事業活動を守るための防御策にもなります。ここでは、XAIの導入によって可能となるリスク回避について、事業運営とコンプライアンスという2つの観点から解説します。

誤判定・不適切な判断による事業損失の防止

XAIは、AIの誤った判断が引き起こす事業上の損失を防ぐ上で役立ちます。例えば、製造業における不良品の誤検知や、金融業界での不正取引の見逃しといったリスクを考えた場合、AIの判断根拠が分かれば、なぜエラーが起きたのかを特定し、迅速なモデルの修正が可能です。これにより、不公平な審査など、ビジネス機会の損失につながる問題も低減できます。判断プロセスの透明化は、業務プロセスの改善やサービス品質の向上に直接結びつくのです。

法的・規制遵守とレピュテーションリスクの低減

AIの活用が広がるにつれ、法的な規制やコンプライアンス遵守の観点も無視できません。XAIを導入し、AIの判断根拠を説明できる体制を整えることで、規制当局に対して説明責任を果たしやすくなります。これにより、AIによる差別的な判断やプライバシー侵害といった法的な問題を未然に防ぐことにつながります。また自社のAI活用が公正かつ透明であることを社会に示すことは、企業のブランドイメージや評判(レピュテーション)を守り、顧客や社会からの信頼を維持・向上させることにも貢献します。

説明可能AIを実現する代表的な技術アプローチと仕組み

では、AIに「説明能力」を持たせるためには、具体的にどのような技術が用いられているのでしょうか。XAIを実現するための技術アプローチは、大きく分けて2つの系統があります。ここでは、それぞれの考え方と仕組みについて、専門用語を避けながら分かりやすく解説します。

モデル透過型の手法(ホワイトボックスモデル)

一つ目は、AIモデルの構造自体がシンプルで、人間がその判断プロセスを直感的に理解しやすい「モデル透過型」の手法です。「ホワイトボックスモデル」とも呼ばれます。例えば、樹形図のような形で「もし〇〇ならば、△△と判断する」というルールが明確な「決定木」や、各要素の重要度(重み)が判断根拠となる「線形回帰モデル」などがこれに当たります。このアプローチの利点は、AIの判断根拠が明快であることです。一方で、モデルの表現力が限られるため、非常に複雑な問題への対応には向かない場合もあります。

モデル非依存型の手法(ブラックボックスモデルへの適用)

二つ目は、ディープラーニングのような複雑な「ブラックボックスモデル」の内部構造には踏み込まず、その入力と出力の関係性から判断根拠を後付けで推定する「モデル非依存型」の手法です。AIの予測精度の高さを維持したまま、説明可能性を付与しようと試みます。代表的な手法には、以下のようなものがあります。

  • LIME(ライム):個々の予測に対し、その周辺の動きをより単純なモデルで近似することで、「なぜこの予測になったのか」を局所的に説明する
  • SHAP(シャップ):ゲーム理論の考え方を応用し、それぞれの特徴(データ項目)がAIの最終的な予測にどれだけ貢献したかを数値で示す
  • PDPやICEプロット:特定の特徴量が変化すると、AIの予測結果がどのように変わるかをグラフで可視化し、影響度を分析する

このアプローチの利点は、さまざまな種類の複雑なモデルに適用できる汎用性の高さです。ただし、あくまでAIの挙動を外側から観察した近似的な説明であるため、その解釈には注意が必要な場合もあります。

説明可能AI導入の課題

XAIは多くのリスクを回避する可能性を秘めていますが、その導入や運用は決して簡単な道のりではありません。ここでは、XAIを導入する上で直面しがちな3つの現実的な課題と、それらを踏まえた注意点について解説します。事前に課題を理解しておくことが、導入計画を成功させる上で役立ちます。

精度と説明性のトレードオフ

XAIを検討する上で避けて通れないのが、モデルの「精度」と「説明性」のトレードオフです。一般的に、ディープラーニングのような複雑なモデルは高い精度を発揮する一方で、その判断プロセスは不透明になりがちです。逆に、決定木のように説明しやすいモデルは、複雑な問題に対して十分な精度を出せない場合があります。そのため、XAI導入の際は、どちらをどの程度重視するのか、ビジネス上の目的やユースケースに応じて、適切なバランス点を見極める判断が求められます。

説明の「質」と「分かりやすさ」の確保

XAIが提示する説明は、必ずしも人間にとって直感的で分かりやすいとは限りません。例えば、専門家には理解できても、現場の利用部門の担当者にとっては解釈が難しい数値やグラフが示されることもあります。

説明が活用されなければ意味がないため、AIの専門知識がない人でも判断根拠を理解し、次のアクションにつなげられるような説明方法を工夫することが求められます。データを視覚的に表現する可視化技術をうまく活用することも、この課題へのアプローチの一つです。

導入・運用コストと体制整備

XAIの導入と運用には、相応のコストと体制整備が伴います。XAI技術を導入するための初期費用はもちろん、それを使いこなせる専門知識を持った人材の確保や育成も必要です。また、XAIは一度導入すれば終わりではありません。変化するビジネス環境に合わせて、データの収集や前処理、モデルの再学習、そして提供される説明結果が妥当であるかの検証などを、継続的に行う運用体制を構築する必要があります。これらのコストやリソースをあらかじめ計画に織り込むことが肝要です。

【業界別】説明可能AI(XAI)の具体的な活用事例

説明可能AI(XAI)は、理論上の概念だけではなく、すでにさまざまなビジネスや社会の場面で活用され始めています。ここでは、XAIが実際にどのように活用され、どのような価値を生み出しているのか、業界別に具体的な事例を紹介します。自社のビジネスに近い領域を参考に、活用のイメージを掴んでみてください。

金融業界

金融業界は、XAIの活用が特に期待される分野の一つです。例えば、ローンやクレジットカードの与信審査において、AIが申請を承認または否決した理由を顧客に説明できれば、判断の透明性が高まり、納得感の醸成や紛争リスクの低減につながります。

また不正取引検知システムでは、なぜ特定の取引が不正と判断されたのかを分析することで、誤検知を減らし、検知モデルの精度向上や新たな不正手口の発見に役立てられています。

医療業界

人命に関わる医療業界においても、XAIはAIへの信頼性を担保する上で貢献します。画像診断支援AIが特定の病変を指摘した際に、その根拠となった画像上の特徴をヒートマップなどで可視化して提示すれば、医師が最終的な診断を下す際の強力なサポートとなります。

またAIが特定の治療法を推奨する際は、関連する医学論文や臨床データといった根拠を併せて示すことで、医師はより多角的な視点から治療方針を検討できるようになります。

製造業

製造業では、品質管理や予知保全の分野でXAIが活用されています。製品の欠陥を検知するAIが不良品と判断した際に、その理由(どの部分にどのような異常があったか)を提示することで、原因の究明や製造プロセスの改善に直結します。

また工場の設備が故障する予兆を検知するAIがアラートを出した際も、その根拠となったセンサーデータのパターンを分析することで、具体的なメンテナンス計画の立案に役立てられます。

人事・採用分野

人事・採用分野では、選考プロセスの公平性を担保するためにXAIが用いられます。AIが書類選考や適性検査の結果を評価する際に、どのような要素が評価に結びついたのかを説明可能にすることで、選考プロセスの透明性が高まります。

これにより、応募者の納得感を得やすくなるだけではなく、採用プロセスにおける性別や経歴などによる無意識のバイアスを組織が発見し、是正するきっかけにもなります。

自動運転・モビリティ分野

自動運転やモビリティの分野では、システムの安全性と社会からの信頼を得るためにXAIが求められます。例えば、自動運転車が特定の運転操作を行った理由(危険回避、交通ルール遵守など)を記録・説明可能にすることは、万が一の事故原因の究明やシステムの改善、ひいては社会からの信頼獲得につなげられます。AIの判断プロセスを透明化することが、自動運転技術の社会受容性を高める鍵となります。

まとめ

AIの判断が社会に与える影響が大きくなる中、企業にはその判断の根拠を説明する責任が求められます。説明可能AI(XAI)は、この課題に応え、AIの透明性と信頼性を確保することで、事業リスクやレピュテーションリスクを低減するアプローチです。

しかし、複雑なAIモデルの挙動を後から分析・説明するXAI技術は、導入や運用に専門知識やコストを要する場合があります。では、よりシンプルに「説明可能」を実現する方法はないのでしょうか。

「amie AIチャットボット」は、その問いに「検索」というアプローチで応えます。「amie AIチャットボット」はAIが回答を自動で「生成」するのではなく、社内のドキュメントやWebサイトの中から、質問に関連する箇所を「そのまま提示」します。そのため、なぜその回答に至ったのかという根拠が、提示された資料そのものであるため、原理的にブラックボックス化しません。
判断根拠を明確にし、透明性と信頼性の高い情報提供を実現したいとお考えでしたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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