RAGの精度はどう上げる? RAGの精度向上のメリットとこつを解説
2024.11.27
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ナレッジグラフは、社内の問い合わせ対応や研究分野で導入されており、業務効率化を図るために有効なツールです。しかしどのシーンで活用されているのか、ナレッジグラフがどのようなものなのか、活用のメリットやデメリットなどの知識までは具体的に分からない方も多いのではないでしょうか。
本記事では、ナレッジグラフの基礎知識からメリット、活用事例まで詳しく解説します。
知識グラフ(ナレッジグラフ)とは、データベースや情報から得られる知識をネットワーク化し、グラフ形式で表現したものです。ナレッジグラフを埋め込んだコンピューターは、人間が物事を自然と認識するように、情報の意味や関連性を理解します。
そのため、カスタマーサポートや社内のチャットボットやアプリなどに活用されており、ユーザーの意思決定を手助けすることが可能です。
ここでは、ナレッジグラフの定義や構築手法、オントロジーと何が違うのかを解説します。
知識グラフ(ナレッジグラフ)とは、データベースや情報から得られる知識(ナレッジ)を結び付け、相互の関係性を構造化したグラフ形式のネットワークです。具体的には、情報同士の関係をノード(点)とエッジ(線)で表現したグラフを指します。
ナレッジグラフはあらゆる情報を地図のように可視化したものです。例えば、地図上(グラフ)に「犬」と「猫」の2つの言葉があるとします。この2つはナレッジグラフ上ではノード(点)として表示されます。犬と猫をエッジ(線)でつなげると「どちらもペットである」といった関係で結ばれる仕組みです。
また「猫はかわいい動物」をノードに分けると「猫」「かわいい」「動物」の3つのキーワードに分解できます。情報同士をつないでいるのがエッジであり、情報の要素がノードといった解釈です。
ナレッジグラフは膨大なデータと情報を高速に処理できるため、効率的な意思決定を促すためのツールとして専門領域の研究や社内の業務効率化、顧客対応などに幅広く用いられています。
これまで機械処理ではできなかった交流サイト(SNS)の投稿や人間が生成した文章、音声、画像などの分析や理解が、ナレッジグラフの導入によって効率的にできるようになりました。最近では、AIの学習データとして活用されています。
ナレッジグラフを構築する手法は、以下の通りです。
まず実施するのは、データソースの選定です。インターネットや論文、文献、データベースなどから情報を取得しナレッジグラフの基盤を整えます。情報の正確性を保つためにも、信頼性の高いデータソースから情報を集めましょう。
次に行うのは、エンティティ(実体)の抽出です。エンティティとは、グラフ上で点として表されるもので、人物や物、場所、考えなどが該当します。直訳すると「実体」を意味し、集めたデータのから重要な情報源を識別する作業です。
続いて、抽出したエンティティの関連性を明らかにしていきます。例えば、抽出したエンティティが「インターネット」「動画視聴」の2つだった場合、この2つの関係性は「インターネットを使って動画を視聴する」です。エンティティ同士の関連性を明らかにする作業は、グラフ上だと線として描かれます。
次に行う作業が、スキーマの設計です。スキーマとは、ナレッジグラフ全体のルールや枠組みを決める作業を指します。スキーマはナレッジグラフの骨格にもなり、どのエンティティがどのような種類に分類されるのか、どのように結び付くかを整理するための作業です。
次に情報の重複を除去し、データを統合していきます。具体的には、集めた情報を一つのナレッジグラフにまとめるステップです。ナレッジグラフを構築するための情報は、複数のデータソースから取っているため、中には重複しているデータや矛盾している情報もあります。データを統合することで、一貫性があるナレッジグラフになります。
最後にナレッジグラフの効果検証を実施します。構築したナレッジグラフが期待通りの機能を果たしているか、ニーズに合った情報を提供できているかを確認する作業です。必要に応じて最新情報を追加したり、誤情報を修正したりしながらナレッジグラフの質を高めていきます。
以上がナレッジグラフの構築手法です。これらの作業を繰り返し行うことで、ユーザーの悩みや質問に迅速かつ正確に応答できるようになります。
ナレッジグラフと混同しやすいのが、オントロジーです。同じものに見えますが厳密には異なる概念を持っています。
オントロジーは、特定のネットワークでの概念やエンティティ同士の関連性をコンピューターが理解しやすいように枠組みを作る技術を意味します。情報を整理するためのルールブックのようなものです。
また検索エンジンには、オントロジーの情報整理機能が働いています。例えば「おすすめの映画」で検索した場合、検索エンジンは「映画」と「おすすめ」という2つの言葉の関連性を理解し、ユーザーの検索意図に合った検索結果を提示します。
ニーズに合った検索結果が表示されるのは、オントロジーが言葉の関連性を定義しているためです。「映画」には、エンターテインメントやジャンル、キャスト、公開日などのキーワードが関連しています。オントロジーの働きによって「映画はエンターテインメントの一つである」とカテゴリ分けをしたり、どのような映画なのかを具現化したりできます。
一方、ナレッジグラフはオントロジーを元にして、実際のデータを線でつなげたものです。オントロジーで定義された情報の関係性を具体的に表現し、データを視覚化します。オントロジーで定義された抽象的な関係が、ナレッジグラフで実際のデータとして明確になる仕組みです。
ナレッジグラフを活用するメリットは、以下の4つです。
メリットは、情報同士のつながりが分かりやすくなり、物事を具体的かつ正確に理解しやすくなる点です。例えば特定の人物の人生をナレッジグラフで表現すると、その人の人生での出来事や関わった人物などが視覚化されます。
具体的には、人物Aの生涯を表現するときにノード(点)となる要素は、名前や出来事、関わった人などです。ノード同士がエッジで結ばれ「人物Aは、〇〇(出来事)をした人である」「人物Aは、〇〇と友人である」として表現されます。
このように、従来のデータベースでは限界があった言葉の複雑な関係性の表現も、ナレッジグラフを活用すれば柔軟に結び付けられます。
ナレッジグラフの活用によって、正確で信頼性の高い情報検索が可能となります。ナレッジグラフは単にキーワード同士を結び付けるだけでなく、具体的な情報の関連性や文脈を理解する能力を持っているためです。
ナレッジグラフは、ユーザーが検索エンジンやチャットボットで検索したキーワード、質問に対して、素早く正確に抽出できるのです。
また、ナレッジグラフはGoogleの検索結果画面の右上に表示される情報ボックスとしても機能しています。情報ボックスには、検索したキーワードに関連する情報が網羅的に表示されています。例えば会社名を検索した場合は、会社の住所や営業時間、連絡先、口コミなど表示される仕組みです。
検索結果のWebサイトのタイトル名をクリックしなくても、正確で信頼性の高い情報をひと目で取得できます。
ナレッジグラフは、既存の情報から新たな知見やデータを導き出せるメリットがあります。
異なる分野のデータをナレッジグラフで結び付けることで、思いもしなかった発見につながる場合があります。例えば、ある地域の環境データと地域住民の健康状態をナレッジグラフで結び付けることで、特定の病気と環境問題の関連性が明らかになるなどです。
ナレッジグラフは既存のデータから新たな科学的根拠を生み出せるため、課題解決の対策を立案しやすくなります。
情報は時代と共に変化し、研究や発明によって新しい知識が次々と出てきます。ユーザーに鮮度の高い情報を提供するためには、ナレッジグラフに常に最新の情報を反映させることが重要です。
ナレッジグラフは、必要に応じて柔軟な見直しが可能です。システム全体の構造を大きく変えずに新たな情報を追加・更新したり、分野や目的に合わせてシステムを拡張できたりします。
ナレッジグラフは、情報同士の関連性を正確に理解できたり、既存データから新しいアイデアを発案できたりするメリットがある一方で、デメリットも存在します。
以下で見ていきましょう。
ナレッジグラフに情報を追加する際は、正確なエビデンスが求められます。
ナレッジグラフ構築に必要なデータソースは、Webサイトや文献、論文などから取得しますが、必ずしも正確な情報とは限りません。特にWebサイトは、根拠を示す情報が明記されていないケースもあり、情報の正確性を証明するのに時間がかかる場合があります。誤った情報がナレッジグラフに埋め込まれると、ユーザーが誤情報だと気付かず間違った方向に進んでしまう可能性があるでしょう。
また検索エンジンで行きたいお店を検索した際に「右上に表示される検索ボックスに記載された営業時間に行ったが、実際はすでに閉店していた」などのケースも起こり得ます。
さらに人間の感情や思いを理解するのが難しいのも、ナレッジグラフの難点です。人の感情には直感的な部分があり明確なエビデンスを見つけにくいため、具体的なデータにするのが難しい場合があります。
ナレッジグラフは、一度構築して終わりではありません。常に最新で正確な情報を維持するためには、定期的なデータの更新とメンテナンスが不可欠です。
例えば、人々の職業や居住地、家族関係などは時間と共に変化します。これらの変更をナレッジグラフに反映しないと、グラフ自体の信頼性や正確性が低下する可能性があります。
社内でデータ更新やメンテナンスのリソースが確保できないと、管理不足になりナレッジグラフの質が落ちてしまう場合があるため注意が必要です。
ナレッジグラフは、社内の情報システムや顧客対応で活用されています。以下で具体的な活用方法と活用事例を解説します。
ナレッジグラフは、以下のような場面で活用できます。
ナレッジグラフをチャットボットに埋め込めば、ユーザーからの質問に対してより正確で関連性の高い返答が可能です。
ナレッジグラフは情報同士のつながりや文脈を理解できるため、単なるキーワード検索ではなくユーザーの求めている答えを素早く提供できます。
例えばユーザーが「A商品の使い方を教えてください」とチャットボットに質問したとしましょう。この場合、ナレッジグラフはA商品の関連情報や利用方法、さらには質問に関連する情報も提供できます。
社内向けや顧客向けのチャットボットにナレッジグラフを埋め込めば、短時間で効率よく問い合わせ業務ができる点も大きなメリットです。
ナレッジグラフと大規模言語モデル(LLM)の連携も期待されています。
LLMとは、数多くのテキストデータを学習したモデルが、人間が理解できる言葉を使って質問の応答や文章の生成を行うシステムのことです。
LLMはテキスト生成に特化した優れたシステムですが、テキスト同士の関連性を体系的に理解できるわけではありません。ナレッジグラフをLLMと連携させることで、LLMが生成する応答が単なるパターン予測にとどまらず、情報同士の正確なつながりや文脈に基づいた具体的な答えを生成しやすくなります。
ナレッジグラフは、ユーザーへの推薦システムとしても活用されています。具体的には、ユーザーのWebサイトやアプリ内で興味を持った情報や行動履歴を利用し、それに関連する要素をつなげ、より好みに合った提案をする仕組みです。
例えば、ECサイトでユーザーが本を購入または閲覧した場合、ナレッジグラフが「この本が好きなら、こちらのジャンルも好きかもしれない」と判断し、ユーザーの好みであろう別の本を提案します。
ナレッジグラフを推薦システムとして活用することで、ユーザーの満足度や体験価値を向上できます。
ナレッジグラフは、文章の要約ツールとしても活用できます。
膨大な文章から重要な情報をピックアップし、ナレッジグラフに置き換えることで、重要な事実や概念の関係を視覚的に示せるためです。
複雑な長文を簡潔に要約できるため、ユーザーが本当に必要としている情報だけを分かりやすく文章にして伝えられます。
ナレッジグラフを用いて、文書に含まれる潜在的なリスクを検出できます。
例えば、企業同士の取引で契約を締結する際は、契約書上で自社が不利になる内容でないか、取引目的に合致しているかなどのリスクチェックをしなければなりません。基本的にリスクチェックは弁護士などの専門知識を持った人が行いますが、契約書の確認と修正には時間がかかります。
しかし、ナレッジグラフを用いたシステムでリスクチェックを実施すれば、契約書内の関連情報や文書構造を分析できるため、潜在的なリスクや不整合点の特定が可能です。
ナレッジグラフの活用事例を幾つか紹介します。
Googleのナレッジグラフカードはナレッジグラフの代表的な活用事例です。ナレッジグラフカードとは、Googleの検索画面の右側にボックスで表示された枠を指します。検索クエリに合わせて、検索したキーワードの関連する人物や場所などが一覧で表示されるため、ひと目で情報を認識することが可能です。
ナレッジグラフは、小売業界の消費者行動の分析にも活用されています。過去の販売データや顧客の行動パターンをナレッジグラフで分析し、商品の関連性を明確にすれば、次に仕入れる商品や量などのコントロールが可能です。
また動画配信サービスのNetflixでもナレッジグラフの原理が使われています。Netflixでは、過去の視聴履歴からナレッジグラフがユーザーの好みを理解し、おすすめの映画をアプリ側から提案してくれます。
このように、ナレッジグラフは小売や娯楽、検索エンジンなどで幅広く使用されているツールです。
ナレッジグラフは、情報同士を結び付けてネットワーク化するツールです。チャットボットの自動応答システムや契約書のチェックツールなどに活用することで、より的確な回答の生成ができたり、不利益な契約内容がないかを瞬時に確認できたりします。
しかし、ナレッジグラフを業務ツールとして導入するにはデータ収集や整理、統合作業などの準備が必要です。準備にかけるリソースがない場合、業務効率化が思うように進まない可能性があります。
amie AIチャットボットなら、既存のドキュメントやWebサイトをシステムにドラッグするだけで自ら学習を進めるため、シナリオを作成せずノーコードで導入可能です。ユーザーの質問の意図に基づいて関連性の高い情報を提供できるのはもちろん、回答に関連する部分のダウンロードもできます。
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